2017年11月12日

第69回正倉院展

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吉川英治のエッセイ「正倉院展を観る」(1959)に、
「なんについてもいえることだが美術工芸も時とともに堕落と迷いの一方をたどってきたといっていい。」
という一節があるのですが、実際そう思えてくるくらいに見応えがあります。

そして、宝物群はいかに装飾的であっても、基本は用具・実用品だということが、正倉院展のおもしろみです。

ところで、京都では「国宝展」が盛況だそうですが、正倉院宝物に「国宝」は一切ありません。
『宮内庁による十分な「管理」が行われている』という見解から、建物以外すべて文化財保護法の対象外になっているのだとか。深いなぁ。
(以下、画像は展示会パンフ、非公式twitterから)

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漆槽箜篌 [うるしそうのくご]
「くご」はいわゆる竪琴/ハープ。収蔵品と復元品。
ペグもあるし、弦をひっかけるヒッチピン(ギターのナットに相当)もそなえた、けっこうまともな楽器だ。

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ギドン・クレーメル&吉野直子という超攻撃型タッグの癒し系アルバム『Insomnia (眠れない夜)』収録、高橋悠治作曲 「ヴァイオリンと声と箜篌のための版」では、箜篌の音色をたっぷり14分も聴くことができます。

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木画螺鈿双六局 [もくがらでんのすごろくきょく]
一部、ガラス玉か何かで3mmほどの丸を隆起させているのが確認できる。

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今回の展示ではないけど、似た感じの琴(檜和琴・ひのきのわごん)と、作者が一緒だったりするのかなぁ、などと想像するのも楽しい。

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碧地金銀絵箱 [へきじきんぎんえのはこ]
傑作ぞろいの絵箱カテゴリーのなかで、本作は写真だと地味な印象だったが、実物は、絶妙な色彩感がとろけるほどの魅力をかもしだす絶品でした。
見た瞬間、あやうく尿道括約筋がブレイクダウンしそうになっちまいました。

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最勝王経帙 [さいしょうおうきょうのちつ]
正倉院収蔵物の中でも人気の一品。写真だとエンジ色&金色っぽくみえるが、もともと紫&白だったらしい。

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迦陵頻伽(かりょうびんが)という人面鳥身の極楽浄土キャラが中心に描かれている。
俯瞰でとらえれば傑出した見栄えですが、ここだけ見ると、ファミコンのドット絵みたいでもある。

余談ですが、1980年前後に「上田知華+カリョービン」という、ボーカル/ピアノ+弦楽四重奏という異色のグループが活動していて、私も結構好きだったのですが、その「カリョービン」はこれが由来。こんなところで元ネタに出会えるとは。

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メインどころ以外で印象に残ったのは「綾継分房付幡等」(あやのつぎわけふさつきばん)。
(おことわり:第127号櫃 第25号、第129号櫃 第104号、あたりがごっちゃになっているかも)
写真では全く伝わらないけど、細密で独特な色彩の中に、現代でも通用するエンブレム風の意匠が組み込まれている。

ということで、今年はじゅうぶん満足できる正倉院展でした。
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エルボーカット加工がようやく終了。
トップ/曲面サイド/そこを45度カット/フレイムメイプル貼り合わせ/さらにバインド、アバロン、白黒パフリング...と、さすがにこれは手間がかかります...。
<以上>
posted by Satoshi Orisaka at 03:18| 地域

2017年10月30日

愛器撮影テクニック

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『ギター・マガジンが本気で教える こだわりの愛器撮影テクニック』という本が出ているようです。
商品撮影から屋外でのイメージ撮影までを取り上げた、ちょっと異色な本といえます。

楽器商社の何でも屋部門が長かった私は、ちょくちょくスタジオ撮影に立ち会ったり、デジタルカメラ普及以降は社内でバリバリ撮影するなど、シロウトながら低予算環境でやりくりしていました。

(銀塩写真時代はいろいろ大変だったなぁ。会社のNikonF3はすぐ電池切れして参ったなぁ。千種区の若水カメラは現像のため雨の日も風の日も行ったなぁ。四日市の開演直前のステージ上でベンチャーズを撮った時は失敗していないかドキドキしたなぁ)


さて、楽器の写真というと、こんな雰囲気の写真がシブかったり、
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郊外・里山(田舎...)の個人工房だと、こんな風景も似つかわしかったりしますが、
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正確な形や、材質感の描写という点では、特殊な背景やエフェクトを排した、ありのままの姿を伝えるための「商品撮影」こそ、基本にして究極ではないかと思うのです。
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そういった意味で、『基礎から始める、プロのためのライティング』は、細かい工夫と光源のコントロールの大切さを教えてくれる、とても良い本でした。
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とはいえ、しがない楽器工房。今回は、カネも装備も時間もないけど、なるべくちゃんとした撮影をしたい、というウチの状況のご紹介です。

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3脚は大昔のスリック製だが、相当しっかりしたもの。
カメラは10年近く前のパナ・マイクロフォーサーズ機GH-1。レンズは望遠タイプ・35mmフィルムカメラ換算28mm〜280mm。
ミラーレスとあなどるなかれ、これでも植物園主催の写真コンクールで銀賞&数万円をゲットした愛器だ。

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日常作業用のデスクライト2発の前にトレーシングペーパーを垂らし、光源をやわらかに分散する。
本体への変な映り込み防止にもなります。
ライトを増やしたり大型にしたり、レフ板を使うほどには手間をかけていない。

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カメラは楽器から約4メートル離れる。可能な限り図面/実物に近い、素直なシェイプを出すためです。

アコースティックギターはヘッド形状やボディ厚みを表現するため、正面の場合は気持ち上から、または気持ち右側から写すことが一般に多いようですが、ブランドごとに多少バリエーションはあります。
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もろもろ簡易的ではありますが、準備や撮影、写真のセレクトやトリミング、場合によって切り抜き処理まですると、半日がかりの作業なのです。

光源の調整によってそうとう印象が変わります。(最近作。インレイは赤味の強いアバロン)
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写真左のように、まずは素直に仕上げることが重要ですが、写真右で絞り出したインレイの「妖気」も大切な個性。ともかくはライティングって奥が深いものですねぇ。
<以上>
posted by Satoshi Orisaka at 02:56| 製作

2017年09月30日

ロングネック

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ウクレレにはソプラノ(弦長約350mm)、コンサート(約380mm)、テナー(約430mm)、バリトン(約510mm)といった4つの種類があります。

軽やかな音やサイズの小ささもポイントであるウクレレには、これら4種をつなぐ「ロングネック」というジャンルがあり、ソプラノのボディにコンサートのスケール、といった組み合わせが一般的です。

明日香弦楽器の製品としては「ソプラノボディ/コンサートスケール」でのWeb掲載モデルはありませんが、試作・お遊び製作をしたことはあります。

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34フレット、Fホール、18フレットジョイント仕様の「ソプラノ/コンサート」モデル。何フレットでジョイントするかによって、ブリッジ位置もふくめ、印象が変わってきます

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ほぼホームセンターで売っている材でつくった「ソプラノ/コンサート」スタイル。15フレットジョイント。雑にあつかえるので台所で愛用中。

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ついでに、これはイントネーションのチェック用に作った「ソプラノボディ/テナースケール」。18フレットジョイント。

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今年製作した正規モデルで、コンサートボディ/テナースケールの「U23」。軽やかな音、スマートなルックスで気に入っています。

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そして、先日完成したオーダー品は、ソプラノボディよりひとまわり小さいボディとソプラノスケールを組み合わせた「U01」モデル。
世間には「ポケットウクレレ」的なミニウクレレもありますが、専用弦を使用するものが多いかも。
今回は弦間隔やスケールはノーマルなので一般性があり、私もノリでオーダーをお受けしたわけです。

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弦とフレットの向こう側で躍動する蝶のインレイ。お客様希望を指板・フレット位置に合わせてアレンジしたシェイプです。

そんなこんなで、いろいろなバリエーションが組めるウクレレの世界ですが、最近、図面や型、冶具の整理が大変になってきています...。

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ギターもバリバリ製作中! オーダー分と展示会分の同時進行。

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ウチの裏手。彼岸花の時期もほぼ終わり。気候もいい具合になってきたので、落ちついて作業に集中できそうです。
<以上>
posted by Satoshi Orisaka at 19:52| 製作