2021年03月02日

鹿鳴(村産材使用)

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2021年の第7回「明日香の匠」展に出品した新作ギター「鹿鳴(村産材使用)」です。
ぜひ画像クリック・別ウィンドウで拡大表示してご覧ください。

ボディ456x314mm、弦長632.5mm、12フレットジョイントのいわゆるビンテージスモール/19世紀ギターサイズで、ブレーシングを含むほぼ全ての部材に明日香村産の木材を使用しています。
(スギ、ヒノキ、ヤマザクラ)

装飾図案の参照元は下記の通り;
口輪:法隆寺/東京国立博物館 「光背」C0044884・N-196_27
ボディパフリング:(花菱意匠)正倉院「紫檀螺鈿五絃琵琶」
 (菱-丸配置)アントニオ・ストラディバリ「サンライズ」
 (ボディ下部半円配置)名称不明・19世紀ギター
ブリッジ、表面板下部:正倉院「紫檀螺鈿五絃琵琶」
ボディサイド:正倉院「三合鞘御刀子」
背面・人物螺鈿:(笙、笛、太鼓)正倉院「墨絵弾弓」 (琴)正倉院「金銀平文琴」

白蝶貝を主に使用し、ボディパフリングの菱と丸はミミ貝。
ブリッジピン/エンドピン部を除き、加工した貝のパーツ点数は224個です。
また、貝への筋彫りも多数行っています。

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サイドバインディングには赤べっ甲セルを2枚使用して幅広に。
また着色バーチ薄板による装飾をサイドに施しています。
そしてこの「三合鞘御刀子」の図案を引用・再構成してホンシュウジカの角を表現したのが、指板のオリジナル・インレイです。

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ボディウェスト部にある4箇所の透明赤デザインもオリジナルのアイディアで、こういったアクセントや曲線に変化を加えるのはエレキギター的アプローチかもしれません。

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ナットとサドルには奈良県猟友会明日香支部からいただいた鹿の角を使用しています。

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サウンドホール内側にも赤べっ甲セル。指板セルのカド部は熱で曲げました。

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背面。板目のヒノキに詩文を掘り込み、アンバーのオイルステインとつや消しクリアで塗装。掘り込み具合をしっかりと残しつつ、文字を明瞭に仕上げています。

詩文は孔子が編纂した「詩経」からの引用。
「小雅 鹿鳴」はおおざっぱにいうと「宴会・もてなし」を表現した詩で、この楽器の装飾群も詩の内容や風情を意識して作っています。
鹿の鳴き声や楽器、儒教上の理想の政治などを深掘りすることもでき、詩経においても人気の収録作のようです。

明治期の「鹿鳴館」の名称も、この詩を元にしています。
鹿の鳴き声や楽器、詩そのものについてはまた別の機会に。

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製作工程など。
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実は展覧会に間に合わせるための仮組み状態で、まだ音は出していません。
現在はいったんバラしてやや雑だった塗装をし直しているのですが、ハコとしてはちゃんと鳴るようなので、さきざきは弾ける楽器として完成させます。
明日香弦楽器の型番としては「Model 300」とし、今後も同シェイプのギターを作っていく予定です。

<以上:明日香弦楽器
posted by Satoshi Orisaka at 16:28| 製作

2021年02月10日

ヤマザクラの製材

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第7回「明日香の匠」展が県立万葉文化館にて2月14日まで開催されています。(入館無料)
当工房の新作ギター「鹿鳴(村産材使用)」が展示されています。是非。
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今回のギターではスギ、ヒノキのほか、ヘッドトップ/指板/ブリッジにヤマザクラを使用。
私の住む「上居(じょうご)」集落にはヤマザクラとソメイヨシノの植林地域があり、イスなどが整備されていないので全く無名ながら、なかなか上質なお花見スポット。

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そのヤマザクラを間引く作業が景観ボランティア明日香(Facebookより写真引用)によって2019年に行われ、私もマイ・ヘルメット持参で(頭デカいからな)参加。
そしてチェーンソーで2メートル弱に切りわけられた丸太を何本かいただいたのでした。

んで、ここからがすんごい大変。
中身は水分ジュクジュクな状態。1週間もすると、内側の割れ/裂けが目立ってくる。

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放置するとこんな具合。これは枝分かれに近い部分のためか、まだマシな方。

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一例。長さと幅が20センチほどの丸太をタテにして、バンドソーで中心に向かって切ったもの(ジュクジュクで、なかなか切れない)を1年以上放置・乾燥させると、これくらい割れ目が広がる。でも、ほかの部分は全く割れていないのがミソですね。

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こういったことから、ごっつい建材などはこのような「背割り」の加工を行うようです。

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今回は取り急ぎ手持ちの電動丸ノコで背割り。丸太の安定のために治具を応急作成しました。

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それからようやく柾目・板目を意識しながら切り分けたものの、まあまあ太い木でも、大きな柾目の材は数多く取れませんねぇ。
切り分けたあとでも、乾燥につれてある程度は上下左右で反るし。

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ちなみに過去のブログで、奈良県銘木共同組合の理事長賞の丸太って、目利きができないのでよく分からんなどと無責任なことを書きましたが、その後関係者にたずねたました。
いわく「年輪が多く、ほどほどに密で均等で、中心に偏りがなく、太い」といったことがポイントで、それには生育場所の日当たりや管理が重要なのだそうです(聞きかじり情報)。

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加工の際は、燻製用のサクラのチップと同様、いい薫りが工房に立ち込め、なにやら食欲がわいてきます。
そんなこんなでようやくヤマザクラ材を今回の楽器製作に取り込むことができました。

専用の装備や場所が整っていないと、伐採直後の木材の加工はすごく大変なことを思い知らされました。
<以上:明日香弦楽器
posted by Satoshi Orisaka at 17:28| 製作

2021年01月16日

とんど

「明日香匠の会」第三回新春作品展 犬養万葉記念館 1/17日まで。
 *地域向けの小規模展覧会。12弦ギター展示中。
 
明日香の匠展 奈良県立万葉文化館 2/6-14
 *新作ギター1本を出展予定。

*本年度、大阪(4月予定・出展受付中)、東京(5月予定・受付前)の展示会に、明日香弦楽器は参加いたしません。イベント関連で諸変更があればWebでお伝えします。
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地方によって「左義長(さぎちょう)」「どんど」などと呼ばれる「とんど焼き」は、小正月(1月15日あたり)に行われる習俗。
災難よけや豊作、家内安全などを願うもので、由来が宮中行事のため基本的に宗教性はなく、その様式・行事内容は地方どころか集落によっても異なります。
9年前にこちらに来るまでは私も、書初めを焼いたりする行事があるらしい、くらいの事しか知りませんでした。

ここ明日香村上居(じょうご)は世帯数20弱の集落。
まずは午前中に竹集めをして、棚田の空きスペースに軽トラで運搬。
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支柱を立てて竹を集め、藤のツルで縛りあげ、さらに竹を突っ込んでゆけば完成。高さ約5メートル。
これで午前の作業は終了です。
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午後6時。
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今年の恵方である南南東から着火。そして燃え上がってゆきます。
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・・・と思ったら、風が強い事もあってうまく火が広がらなかったので、早めにぶっ壊すことに。
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ホント、天然の造形・デザインに勝るものはないですねぇ。
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竹がパーンと爆(は)ぜるリアル爆竹が周囲の山に響き渡り、痛快だ。

最後に、ロウソクにとんど焼きの火を移し、ちょうちんに入れて各家庭に持ち帰り、神棚に供えて無事終了、ということになります。
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「明日香の匠展」提出作品を全力製作中。
間に合うのか不安なのと、仕事で不実な対応を何件かしてしまっている心苦しさと、作品が日々できあがってゆく興奮で、もう、感情がぐっちゃぐちゃです。
<以上:明日香弦楽器
posted by Satoshi Orisaka at 07:27| 地域