2019年03月07日

プリンセス・カイウラニ

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先日の「明日香の匠展」に出したテナースケール/コンサートボディの8弦ウクレレ。
ウクレレの機能・サイズ感・美しくもはかない音色は大好きですが、行ったことすらないハワイに強い思い入れがないこともあって、これまであえてコア材を使っていませんでした。

今回のブラックコア材ウクレレの製作にあたっては、「日本:ハワイ」の関連性を大上段から振りかざしてみることに。
旧ハワイ王国「カイウラニ王女」への献呈品を想定し、さらに本年5月の「即位」というイメージを加えてみました。
(なお私自身、特に右/左派的な志向はありません。)

[指板部デザイン参照元:正倉院宝物/金銀平脱背八角鏡、中原哲泉筆/菊御紋鳳凰菊唐草文花瓶下図、大正天皇即位時の八稜鏡形鳳凰文ボンボニエール]

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音出し調整はまだです。多少手直しをして5月の展示会にもってゆきます。

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カイウラニ王女についての解説はてっとり早く;
Wikipedia(日本語)  Wikipedia(英文)

郷土が大国に飲み込まれる過程に生き、日本との縁もあった、悲劇の王女というわけです。

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カイウラニの和装写真。1898年撮影。


2009年の伝記映画「プリンセス・カイウラニ」はロマンス要素を入れつつも、史実はきっちりフォローしている作品です。映画全編。字幕なし。
(日本の話は出てきません。)

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以上、で今回は終わっても良いのですが;

私の父方の曽祖父は1885年ごろ松江からハワイに夫婦で移民して、まもなくカリフォルニアに移り、1910年代頃に松江に戻っている。(年代は推定)
男の跡継ぎができなかったから帰国したと聞いていますが、おそらく、当時は日系移民にとってお先真っ暗な社会状況だったのではないか、と。

そんなこともふくめ、ハワイ/カイウラニ/日本関連をごく私的に整理した年表です。

・先史時代
・1778年 ジェームズ・クック来航
・1795年 ハワイ王国建国
[1867年 日布親善協定]
[1871年 日布修好通商条約締結]
*1875年 カイウラニ出生(母・ハワイ皇族、父・イギリス人実業家)
*1881年 カラカウア王来日。カイウラニ王女と山階宮定麿王との婚姻を明治天皇に提案
[1885年 日本からの官約移民開始]
*1889年 カイウラニ、イギリス留学
[1890年 カリフォルニア州への日本人集団移民開始]
・1893年 現地アメリカ人によるクーデター。ハワイ王国滅亡。臨時政府成立
[    日本、邦人保護を理由に軍艦2隻を派遣。(艦長は東郷平八郎)]
*    カイウラニ、訪米。ホワイトハウスにて大統領と面会(併合反対を主張)
・1894年 ハワイ共和国成立
*    リリウオカラニ元女王、カイウラニにカヴァーナナコア元王子、他ハワイ皇族または小松宮彰仁親王いずれかとの婚姻を提案
*1897年 カイウラニ、ハワイに戻る
・1898年 アメリカ自治領化。(準州/territory)
*    カイウラニ、カヴァーナナコア元王子との婚約を発表
*1899年 カイウラニ病死(23歳)
[1906年 アメリカ政府、帰化法を改正(日本人の帰化拒否)]
・1959年 ハワイ州成立

1894年の小松宮彰仁親王(のちの陸軍元帥。当時48歳)との縁談については英文Wikipedia記述情報。夫人との間に子供ができなかったことも勘案されたのだろうか?

カイウラニは憂国や献身の気持ちがとても強かった人なので、日本の時世しだいでは(鹿鳴館的な欧化時代をすっとばして軍拡してたら、とか)皇室とつながった可能性もなくはなかったように想像してしまいます。

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ハワイはネイティブの人口が歴史的に10-30万人程度であったり、もともと国家の概念のない諸島であったりするのですが、いろいろ知ってしまうと、リゾート、エンタメといった表面的なイメージに対して、私は「なぁんだかなぁ...」と思ってしまうのです。

楽器製作ではそんなことなど考えない方が良いのでしょうが(アロハでも着てニコニコしながら作っている方がウケも良いと思う)、以前からのわだかまりと向き合いたかったので、今回のウクレレ作品はあえて大げさに取り組んだ次第なのでした。

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<以上>
posted by Satoshi Orisaka at 02:18| 製作

2018年12月14日

桔梗デザイン

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桔梗(キキョウ)の開花時期は6-9月。花言葉は「気品」「清楚」「永遠の愛」「誠実」「従順」などなど。
夏は飛鳥駅前にも植えられており、ウチの庭でも咲きました。色は青(紫)、白が多いです。
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気球のような袋の状態でふくらみ、やがて中央が割れ5枚の花びらが開き、次第に先がそりかえるのが特徴。
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多くの植物は花の中で雄しべと雌しべが受粉しますが(自家受粉)、キキョウは「雄性先熟」といって、雄しべが花粉を放ち終えたのち、雌しべが成熟して他の花の雄しべから花粉を受け取るそうだ。(今夏のNHKラジオ「子ども科学電話相談」で先生が言っていた)

雌しべ側からみれば潔癖ともいえるが、ありがちな青春恋愛映画とは真逆の、幼なじみを華麗にスルーしてしまうストーリーだ。

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[雄しべが広がる一方、中央の雌しべは閉じている]

また万葉集で5首ほど登場する「アサガオ:朝皃、安佐我保」はキキョウを指すそう。

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古来から親しまれているだけでなくデザイン性も高く、家紋の題材の定番。シンプルなイラストの場合、花芯や花びら内側の丸みの表現で変化が付けられます。

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...そんなキキョウのデザインを指板に盛り込んだ、コンサートウクレレのオーダー品です。
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何度もやりとりをしながらデザインを確定。
白蝶貝インレイ。柱頭は映え重視で赤に。

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ブリッジにも白蝶貝。さらにキキョウの葉(4.5x1.6mm)を計4枚ちりばめている。
一部は曲面へのインレイですが、元デザインからの再現もしっかり出来てますでしょ?
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今回初めて取り組んだのが、ボディの「スプーンカット」。
カッタウェイとくらべ、ボディの容積減を抑えながら、ハイポジションの演奏性向上をねらったものです。
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エレキギターをはじめ、他社/工房のウクレレ、ギターでも時折見られる仕様とはいえ、カットしたトップ側にもきっちり黒白黒のパフリングが入っているのが本ウクレレの特徴です。

豊かで芯のある単音を聴かせたいソロ演奏において、ナイロン、フロロカーボン弦との相性が抜群のセダー材トップ。ローズ・サイド&バック。4弦はローG。

ちょうどキキョウの開花時期だったので、興味深く実物を観察しながら製作できて楽しかったです。
<以上>
posted by Satoshi Orisaka at 21:38| 製作

2018年09月04日

ベベルド・コンタ−

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右ヒジとギターが接触する部分の加工はエルボーカット、ショルダーレスト、ドロップトップ等々、いろいろな言い方があります。
特にアコースティックの場合、そもそも腕の内側・関節の部分なので、なくても演奏上は支障がなかったり、むしろない方が安定するという見方もあります。
ただ、あればあったで、ギターを構えた瞬間、ラクに感じるのも事実です。

ランニングシャツ、もしくは上半身裸で演奏する場合なども、具合が良いでしょうね。
(おぉっ!ミックとキースで見事に揃った)
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後付けのパーツもいくつか市販されており、他の工房品でもシンプルなパーツを付けしたものが多くあります。
私の場合も、5mmのアクリル板を曲げてボディサイドに付けた実売例があり、実際これでも腕への当たりはソフトになります。鳴りに対する影響もほぼありません。
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ただ、後付けパーツは作った側からするとどうしても「後付け感」があり(当たり前...)、なにか他の方法はないかな、と模索してしまいます。

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まずは比較的にマイルドな加工例。これは当工房232モデルというおよそオーディトリアムサイズのボディに施したもので、通常のカドは2mm程度のRのところ、5-7mmのRになります。(232FC-2018-05-005)

そもそもボディが小ぶりで抱えやすく、これくらいで充分かもしれません。
トップとサイドの黒白黒パフリングを省略してないところもポイントです。
(材にもよりますが、オプションで1万〜2万プラスといったところ)

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次が「ベベルド・コンター」とも言われる、斜めに大きく切り落とされたタイプ。(ベベル:bevel=斜角)
もちろん弾きやすさは個々人の好みとはいえ、大きなドレッドサイズで、ストローク弾きが多い奏者にとってはフィーリングが良いかもしれません。

作る側からいうと、アコースティックギターではバインディングやパフリングがあるため加工が大変なものの、そういった処理を含め、嗜好や腕の見せ所でもあります。
テイラーのカスタム風のなだらかな変化も自然でよいですが、私は「ココ、加工されてますっ!」的なルックスが好みです。

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まずは、通常のバインディング、パフリング用の加工を先に済ませる。

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45度のドリルでカット。写真は工房用実験分・ひさびさ加工のためキレイではないので、自分の名誉のため(?)一部モザイクをかけさせていただきました...。

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あらかじめ曲げた板を貼り付け、トップとサイドにあわせて削り出します。

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トップのみならず、サイドの黒白黒パフリングもベベル部に沿わせ、通常のボディパフリングと律儀に連結させます。

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写真のギターはベベル部がフレイムメイプル、バインドは竹でした。
製作者によって手順はことなると思いますのであしからず。
2本目はそれなりにスムースに作業が進みます。

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とはいえ、きっちり仕上げるには非常に手間のかかる作業です。バインドやパフリングの仕様にもよりますが、今のところオプション見積もりはプラス3万から4万円としています。
お客様カスタム品の方は6月に本ブログで紹介しました。

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しばらくはこんな加工もないだろーなー、と思っていたら、今はこういうオーダー品を作っています。
ウクレレのスプーンカット加工です。
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<以上>
posted by Satoshi Orisaka at 11:24| 製作