展覧会用として作られたアート作品であると同時に、地域の遺物や万葉集、機構のアイディアも盛り込んだ、竪琴の「コンセプト・モデル」です。
「明日香の匠」展(県立万葉文化館:2020/2/8-16)にて展示されました。
そして6月から、南都明日香ふれあいセンター・犬養万葉記念館にて展示されています。
展示期間は未定(年内?)。入場無料の施設ですので、気軽にお立ち寄りください。(水曜定休)
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銅鏡や箱などにみられる「八稜/八花」と呼ばれる外形を基本に、開口部は万葉集において頻出する語句で、竪琴/ハープと取り合わせも良い「月」をかたどっています。
高さ60p。
材料は主にウォルナット。そして色合わせをした地元産のスギ、ヒノキを使用しています。
共鳴板の孔(サウンドホール)には高松塚古墳出土品の透かし彫りデザインがあしらわれています。
単に透かし彫りをしただだけではない立体的な造形となっています。
弦は22本・3オクターブ。クラシックギター用弦を使っています。
小型のハープは一般に2段階の「シャープレバー」を使いますが、本器は新開発のオリジナル・半音3段階の「全音(ホールトーン)レバー」を搭載しています。
繊細な音程や安定性、取り付け方などは課題として残っていますが、意欲的な新機構ということでご理解ください。
ヒッチピン、チューニングピンは既製品ですが、琴柱/駒は村内で大量出土した遺物の形がモチーフ。
外形が銅鏡をモチーフにした名残りとして、ステンレス板で鏡を表現。
アウトプットジャックはダミーですが、これはピックアップの搭載を意識したものです。
底面には金具を仕込み、台座に強固に取り付けることができます。(カメラ三脚用ネジ・1/4-20UNC使用)
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製作工程など。
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そして、背面には掘り込み/塗料埋めにより、万葉集・巻5-811・大伴旅人の詩文がえがかれています。
「言問はぬ樹にはありともうるはしき君が手馴れの琴にしあるべし」
意訳:何も言わない木という材で作られていますが、高貴なあなた様がきっと愛用する琴となるでしょう。(そして美しい音を奏でる事でしょう)
<以上:明日香弦楽器>