2023年09月04日

トーハク・法隆寺宝物館

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上野の東京国立博物館エリア内にある「法隆寺宝物館」は、明治11年(1878)に奈良・法隆寺から献納された宝物300件あまりを収蔵・展示している施設です。

明治維新後、廃仏毀釈の風潮で全国の寺社はズタボロの状況。
そんな中、法隆寺は歴史的施設の保持と宝物の逸失を防ぐため、結果的に一部宝物を引き換えにして国から金銭的支援を得たわけです。

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コロナ5類移行後の5月末。東京でのギター展示会が終わった翌々日に法隆寺宝物館へ行きました。

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仏像の背後に設置する「光背」は、個体によって洗練度は異なるものの、それ単体でも現代に通用する凝ったデザインが特徴です。

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なお、先年私が製作したギターの口輪の元ネタはこれです。3年越しでようやく実物を見ることができました。

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高さ30センチ程度の仏像群。配置や個々の照明も整っていて、それだけで静謐かつ荘厳な雰囲気を味わえます。

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個々の作品は細工がどれも緻密で、見ごたえがあります。
都合のいい神様なんていないことなど昔の人だって当然知っていたわけで、やはり「人知を超えたい」という人間の欲求や希望がこういう作品群に込められているような気がします。
それにしても、プロテーゼをブチ込んどるんか思うくらい、芸能人なみに鼻筋が通ってますな。

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飛鳥・白鳳期の仏像の台座って、大小問わずこんな具合の平面的な布の表現が多いのですが、これは手間をケチったのではなく、台座としての安定感にリアルさを残した装飾性を加えつつ、上半身の作り込みを際立たせる工夫なのでしょうか。(アカデミックな解釈は知りませんが)

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なんか既視感のある観音菩薩像だと思ったら...、

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最近X(旧ツイッター)で流れてきた猫画像と構図が似ていたのでした。

奈良の法隆寺にも大宝蔵院があり、その他「夢殿」を代表とする様々な建物にも仏像仏具が置かれています。
一方、東京に移動された宝物は比較的小さく、精緻な工芸が冴えわたる逸品が多い印象です。
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なお、おなじみ正倉院宝物は渡来文化や工芸を日本人がほぼ体得した時期のものですが、法隆寺の宝物はその約150年前。フレッシュな受容期でありながら、古来からの感性になじむよう研鑽が重ねられていた時期のものといえます。
そういった点でも実に興味深い作品群でした。
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宝物館を出て、いやいや良いものを見せてもらったなぁと神聖な感興にひたっていたら、本館前のベンチに欧米のねーちゃんが白く長い手足をむき出しにして座っていました。

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そうだ、コロナ禍は明けたのだ。ありがとう。乾杯。
<以上:明日香弦楽器
posted by Satoshi Orisaka at 17:11| 日記

2023年08月01日

Model 300

工房初のスモールボディ、ミディアムスケールの明日香弦楽器「モデル300」を今年リリースしました。
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12フレットジョイント。パノルモなどいわゆる19世紀ギターのサイズで、マーティンだとシングル・オーあたり、ギブソンだとL-1あたりに相当します。
(以下、各メーカー、各モデル詳細については掘り下げないことにします。突っ込まれるとワケわからんので)
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私はこのサイズのギターを展覧会用、初の自分用としてすでに2本作っているのですが、忘れかけていたギター演奏の素朴でパーソナルな楽しさを再発見できた思いです。(製作面でも)

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この際、ウチの工房のギターがおすすめなんてこと言いませんが、最低でも625とか630ミリ程度のミディアムスケールで、箱鳴りの良い個体であることが重要だと思います。
多くの聴衆用やモダンな鳴りには向かないものの、このサイズ感のギターこそが気楽に長く付き合える「相棒」であると宣誓できます。

おすすめポイント[1]:ギターの魅力を再発見
低音がドコドコ鳴らない分、音のつぶ立ちが良く、シンプルなコード弾きや単音弾きが映えます。ギターを始めたころの音に対するトキメキを思い出させてくれます。

おすすめポイント[2]:押弦が楽、抱えるのも楽
弦の張りが弱くドレッドサイズほど音量がないぶん、強く弾けばビリ付きも起こりますが、そこは皆さん!「オレの彼女は笑うと歯茎がぶりんと出てそれがまた可愛い」といった、感情のフックとなる「愛すべき個性」ってやつではないでしょーか!!

コンパクトかつ軽いのでパッと手に取り、気まぐれに弾けるのも魅力です。

おすすめポイント[3]:ブルースマン御用達
リズム感や手クセも含めた弾き手のセンスが魅力のブルースギター。味のあるガシャガシャ感も出せるこのサイズはさすがギターの原点です。

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荒々しいボトルネック奏法も味があって良いですね。私はノーマルチューニングで単音を弾くだけで精一杯ですが、ボトルの扱いに慣れると、別の楽器をもう一種類マスターしたくらいの充実感があります。

おすすめポイント[4]:ギタ女の選択肢として
男性とは骨格・肩幅が違うので、ドレッドサイズだとストロークの位置がネックジョイントの位置近くまで寄ってしまい、ジャキッとした音を出せていないケースを多く見かけます。
小顔効果を狙って大きいギターを選ぶ方もいるようで、まぁそれはそれで「♪あざとくてご・め・ん」ってことでいいんですが。

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ジョーン・バエズ(身長166cm)をはじめ森山良子さんや復帰後のmiwaさんなどを見ていて、小型のギターを演奏する姿はスッキリ整っているように感じます。

おすすめポイント[5]:ななめビューがかっこいい
特にカッタウェイ・タイプは結局のところレスポールに近いからでしょうが、このタイプのギターってななめから見ると特段カッコ良く見えるんですよね。

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展示会でいろんな方がモデル300を弾く姿を見て、「いやぁ、カッコ良いっすねぇ〜」と我ながら気持ち悪いことを言ったりもしました。キョトンとされましたが...。

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けっして世にあるミニギター、パーラーギターの全てがおすすめと言ってるのではないです。
弦長が短すぎたり、箱鳴りが弱すぎたりすると、むしろ妙なストレスがたまりますもんね。

<以上:明日香弦楽器
posted by Satoshi Orisaka at 19:22| 製作

2023年06月01日

展示会2023大阪東京

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「サウンドメッセin大阪」が5月13、14日に南港ATCホールにて開催されました。

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Model300「鹿鳴」(明日香の匠展2021年出品)、Model300(新作)ほかギター3本、ウクレレ3本といった拙工房の展示内容です。

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その2週間後の5月27、28には「TOKYOハンドクラフトギターフェス」が錦糸町サンライズホールにて開催されました。
大阪と同一の構成で、お買い上げで抜けたウクレレU2のかわりにU2B「ビワレレ」のシャドウPU付きを追加しました。

なお、イスの配置も含め、きっちりブースのエリア規定を遵守しておりますですよ。こーゆー融通の効かなさが私のダメなところなのでしょうけど。


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コロナ明けで3年ぶりの展示会出展。明日香弦楽器の主砲は「鹿鳴」(過去ブログ)ならびに「磬架(けいか)ギタースタンド」でした。(親指ピアノをいっぱい売っていただいた日本娯楽さんに悪意はありません。通路のオーディエンスに向けての放射という意味です...)

ギター本体だけの展示では絶対に周囲に埋もれると推察し、1月から写真トレース&ベジェ曲線化などの設計を開始。
おもにヒノキを使い、上部は強度アップのため5層・11ピースのヒノキ板を貼り合わせて直前の1週間で完成させました。4組の埋め込みナットとボルトにより短時間で組み立てることができます。
凝ったヒモを付けると仏具感が増すので、シンプルにナイロンで釣っています。

ブースにお立ち寄りいただいた皆様、ありがとうございました。
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奈良県宇陀市、「女人高野」の呼び名で知られる名刹・室生寺(むろうじ)。

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私は寺社仏閣・博物館美術館に行くと、何か製作のヒントはないかと常に目ぇギンギンにしている。

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写真引用元
寶物館で「磬架」を知りました。「磬」は中国で紀元前2000年頃から存在していた石・金属製楽器。日本では仏具として定着しました。
磬架の上部デザインはインドにおける古典的なもので(浅い知識...)、宗教性は強くないため現代でもよく使われるようです。優雅かつ安定感のある曲線の組み合わせですよね。

かねてから楽器の表裏、横が見えて、品のあるスタイルのスタンドを模索していて、「着物の衣紋(えもん)掛けもいいけど、神社の鳥居がモチーフと誤解されるしなぁ」と行き詰っていたところでした。ですので、室生寺で見た瞬間「こっ、これだ!」となりました。

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奈良国立博物館にも室生寺の磬架と酷似したもの(写真左)があり、また、皇室リアル御用達の「奈良ホテル」には明らかに磬架をモチーフにしたスタンドがあります(写真右・引用元)。

展示のちょっとした裏話でした。新作Model300のご案内はまた後日。いいんだ、これがまた。
<以上:明日香弦楽器
posted by Satoshi Orisaka at 23:07| 展示会